熊本大学の研究グループは、インスリンに小腸透過性環状ペプチド「DNPペプチド」を組み合わせることで、経口投与でも注射の約3~4割に相当する血糖降下作用を示す新技術を糖尿病モデルマウスで確認しました。単回投与で血糖値は正常域まで低下し、1日1回の投与を3日間続けても、毎回ほぼ同程度の効果が得られたと報告しています。

研究チームは、インスリンが消化管を通る際に分解されやすく腸から吸収されにくいという課題に対し、小腸を通過しやすい環状ペプチドを活用しました。まず、D体アミノ酸で構成されたDNPペプチドに、インスリンに結合しやすいペプチドを連結した「D-DNP-Vペプチド」を合成し、注射薬で用いられる亜鉛インスリン六量体と混合。相互作用させるだけで、経口吸収が大幅に向上し、マウスの血糖値を正常域まで下げることに成功しました。次に、クリックケミストリーという化学反応を用いて、DNPペプチドをインスリンと直接共有結合させた「DNP-インスリン結合体」を作製し、亜鉛を加えて経口投与したところ、混合手法と同等の血糖降下作用が得られました。

これらの結果から、「混合(相互作用型)」と「共有結合型」という二つの方式で、飲み薬としてのインスリン開発に応用可能な基盤技術が確立されたとしています。現時点ではマウスでの前臨床段階であり、ヒトへの応用には安全性評価や投与量の最適化など多くの検証が必要ですが、注射による身体的・心理的負担を軽減する新しい糖尿病治療薬の実用化につながる可能性があります。研究成果は2025年11月24日付で国際学術誌「Molecular Pharmaceutics」に掲載されました。

source: PR TIMES

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